たまなちゃんがお嫁に行って半月後に、
‘まことくん’が欲しいという電話がありました。
阿部さんという女性の方でした。

J地区にお住まいだそうで、約束の日の夕方に、
J地区のコインランドリーで待ち合わせたんです。

しばらく待っていると、小さなゲージを持った女性がやって来ました。
主婦で、昼は仕事をされているとおっしゃってました。

「私の家はこの坂を上ったとこにあるんで、時々遊びに来てくださいね♪」

とおっしゃってました。
次の日、ちゅわこが仕事をしていると、突然阿部さんから電話が。

「子猫が泣いてばかりでなつかないの。
うちにもう一匹、子猫がいるんだけど、その子、オスだからかしら?
朝見たら、テレビの影に隠れてて、
『ウ~~』ってうなってるんですよぉ。
で、うちの主人が、返した方がいいんじゃないかって言うの。
私のこと、嫌いなのねきっと…ウワーーーン!!!(泣)」

ちゅわこはその時、とても忙しくて、
今すぐ会社を抜けるなんてできませんでした。

「まだ来たばかりですし、もうちょっと様子を見ていただければ…
 また夜に電話いたしますので」

と言って電話を切ったんです。
仕事が終わった後に、ちゅわこがいつもお世話になっている
動物愛護ボランティアの方に相談しました。

「寝床に目覚まし時計を置いておくといいわよ。
 お母さんの心臓の音だと思って安心するから。」

と教えてもらい、それを阿部さんに伝えました。

「やってみます、ありがとうございます!」とおっしゃてました。

翌日また、阿部さんから電話が。

「やっぱり、私じゃ無理なのかも…だから知り合いにあげようと思ってるの。
 その人、猫は飼ったことないんだけど、動物大好きだから。
 うちにはもう一匹猫が居るし、オス同士じゃ合わないと思うのよね!」

・・・えっ?

確かにもらった猫をどうしようとその方の勝手だけど…
猫を飼ったことがない人に、自分になつかないからってあげてしまうの?
だったらいっそ返してもらった方が…と思いましたが、
子猫をこれ以上置いておけない、ちゅわこの家庭の事情がありました。
当時は、ちゅわこのお母さんが入院を控えていたんです。
そしてつい、
「どうしてもダメなら…」と言ってしまったんです。

その後、だんだん阿部さんに対して、不安が募りました。
返してもらおう、でもあげたんだから…ずっと悩んでいました。
翌日の夜に、阿部さんに電話をしました。

ちゅわこ「様子の方はどうですか?」

阿部さん
「なついたし、ご飯も食べてるようだし、大丈夫ですよ。
 私、今飲み会の最中なの。失礼しまーす。」

いきなり電話を切られました。
飲み会?自分の猫を放っといて飲んでるの?心配じゃないんだ?
不安はますます募り、翌日また電話。

阿部さん
「あのね~、私、昼は働いてるから、
 家の中に置いておくのはかわいそうだから、外で自由に飼いたいの。」

ちゅわこ
「まだそれはダメですよ~!小さいですし、まだなついてるとは思えませんし…
 外に出したら迷子になっちゃいますよ…
 それじゃぁ、様子を見に行ってもいいですか?」

阿部さん
「私、夜しか居ないし、
 旦那も居るから見に来られると困るから来ないで!!!
 大体何よ!この子ホントに4ヶ月なの?
 随分大きいじゃない、半年以上過ぎてるんじゃないの?
 あんた嘘ついてるでしょ!!!」

ちゅわこ
「そんな事ないです、4ヶ月です!
 オスだから他の子よりも大きいんです。」

ついに今まで我慢していた言葉が出てしまいました。

ちゅわこ
「やっぱり…返してもらえませんか?」

その途端、阿部さんは、キレました。

「はぁ?いまさら何言ってるの!!!
 じゃあなんで、最初に私が返すって言ったときに、
 取りに来てくれなかったの!!!
 もう遅いわ!情が移っちゃったし…絶対返さない!!!」

ちゅわこは「わかりました」としか言えませんでした…

阿部さんは、勝ち誇ったように

「フフフッ(嘲笑) では失礼しま~す♪」

と電話を切ってしまいました。

…ちゅわこが間違ってるのかな…?
ちょうどその時、愛護ボランティアの方が、

「その後、猫ちゃんはどうしたんでしょう?」

と連絡をしてきました。
これまであった事を伝えると、

「今すぐ、取り返しに行った方がいいわ!
 前にも同じようなケースがあったのよ。
 犬だったんだけど、
 なんか里親の言動がおかしいって思ってたら、その子捨てられたのよ!
 里親は行方不明になってたし…
 プリペイド携帯を使ってたみたいで、
 連絡先ももぬけの殻で…偶然、警察に保護されていたのよその時!」

それで愛護ボランティアの方と一緒に、
阿部さんのお宅があると思われる場所に向かったんです。
阿部さんが「この坂の上に私の家があるのよ」と言ったJ地区です。

《つづく》